「保険診療のニキビ治療では治らない」
「ニキビ跡が増えてきて困っている」
などでお悩みではありませんか。
イソトレチノインは、一般的に「ニキビ治療の切り札」と呼ばれている飲み薬です。ニキビに関する肌悩みの他にも酒さや毛穴、皮脂などの悩みがある方に向いています。
今回はイソトレチノインで期待できる効果や治療前に知っておきたい「飲み方」や「副作用」「効果はいつから出るのか」、「やめた後はどうなるのか」など治療についての疑問・質問なども解説します。
ニキビ・ニキビ跡治療、酒さ治療、毛穴や皮脂の治療について興味のある方や、どうすればいいのか困っている方はぜひ参考にしてください。
目次(クリックで開閉)
イソトレチノインとは?
ビタミンA誘導体の経口薬で、米国では重症ニキビの治療薬などとして40年以上使用されています。日本では厚生労働省の承認が取れていないため保険適用外となりますが、重症ニキビに対して効果の高いニキビ薬として知られています。「ニキビ治療の切り札」ともいわれているため、繰り返すニキビや重症ニキビなどにお悩みの方におすすめです。
イソトレチノインには、ニキビの原因である皮脂の過剰分泌や角化の異常を抑えて既存のニキビを減らすなどの作用があります。薬剤には、以下のような種類があり、全て薬の作用は同じです。
- 先発医薬品
アキュテイン
- 後発医薬品
ロアキュテイン(ロアキュタン)
アクネトレント
イソトロイン
当院では、アクネトレントを採用しています。
イソトレチノインのニキビへの効果
対応できる肌悩み
- ニキビ(主に重症の場合で、軽症・中等症でも繰り返す場合に)
- 酒さ(赤ら顔とニキビのようなぼつぼつ)
- 毛穴の黒ずみ
- 皮脂
イソトレチノインには、以下の効果があります。
過剰な皮脂分泌を減らす
ニキビの原因には、皮脂の過剰な分泌が関係しています。イソトレチノインは、皮脂腺を退縮させる働きにより、過剰な皮脂分泌を減らす効果が期待できます。
毛穴の詰まりにアプローチする
ニキビの原因には、毛穴が固くなって塞がりやすくなる角化異常が関係しています。角化異常があると、それだけ皮脂が毛穴に詰まりやすくなってしまうのです。イソトレチノインは皮膚細胞にアプローチして角化異常を正常に整える働きが期待できます。
重度のニキビや繰り返しできるニキビに
非常に治りにくいと言われているタイプのニキビに「嚢胞性(のうほうせい)ざそう」という種類があります。海外ではこのような重症のニキビについて、イソトレチノインによる治療が推奨されています。また重症のニキビだけではなく、軽症~中等症であっても、他の治療で効果が実感できないような繰り返しできるニキビにイソトレチノインを処方することがあります。
イソトレチノインでの治療を考えるとき
ニキビの保険診療など他の治療で2ヶ月ほど治療しても改善がみられない場合には、イソトレチノインでの治療を検討する余地があります。イソトレチノインは塗り薬、飲み薬、レーザーやピーリングなどの施術を含め、効果が高い治療法のひとつです。ですが、副作用や仕様上の注意点があるため、治療の最初から内服を始めることは稀です。
また、イソトレチノインは酒さにも効果的です。酒さは、赤ら顔や毛細血管の拡張、ニキビのようなぼつぼつが生じる皮膚疾患です。酒さでは毛細血管拡張や、鼻と頬、眉間など顔の中心部をメインに赤みが生じます。
原因は明確になっていませんが、食べ物やストレスなどの体の内部環境、気温や紫外線などの外部環境、毛包虫(demodex folliculorum)などが関与しているといわれています。イソトレチノインは、皮膚下の毛を生成する毛包の環境を整えるため、酒さの原因菌とされる毛包虫を減らすことが可能です。
イソトレチノインが向いている方
- 繰り返しニキビができる方
- 大型でしこりのあるニキビが多い方
- ニキビ跡ができやすい方
- 難治性のニキビがある方
- 酒さのボツボツが気になる方
- 他の酒さ治療で効果を実感できなかった方
- 酒さで鼻瘤の症状がある方
- ニキビや酒さの影響でごわごわと厚ぼったい肌質の方
- 毛穴の黒ずみが気になる方
- 皮脂の過剰な分泌が気になる方
イソトレチノインはニキビ・ニキビ跡、酒さ、毛穴や皮脂・毛穴のお悩みがある方に向いた治療方法です。
下の写真は保険適用のニキビ治療で3年間治らず当院を受診した重症のニキビ患者様です。
治療内容 | ニキビ治療。半年のイソトレチノイン内服、並行してVビーム2によるレーザー治療 |
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治療期間・回数 | 半年間、Vビーム2によるレーザー治療を7回 |
費用 |
イソトレチノイン20mg/日で30日分16,500円を6ヶ月 Vビーム頬から下 22,000円を7回 トータル253,000円 |
リスク・副作用 |
イソトレチノイン:胎児奇形、皮膚や粘膜の乾燥、頭痛、筋肉痛、骨痛うつ病など Vビーム2:赤み、むくみ、内出血、水疱、色素沈着、色素脱失など |
院長コメント | 写真のようなボコッとした大型のニキビは保険適用内の治療が難しいことが多々あり、その際はイソトレチノインで速やかに治療することでニキビ跡の赤みや凹みが悪化することを防げます。ニキビ跡になると治療がさらに難しくなるので、なるべくニキビを早く治してニキビ跡が出ないように予防することがニキビ跡対策になります。 |
どんなニキビに効果がある?重症ニキビにしか使わない?
イソトレチノイン(アクネトレント)には後述する注意点があるので最初からニキビ治療に使う飲み薬ではないですが、重症ニキビだけでなく、軽症〜中等症でも繰り返すニキビには処方することがあります。ほかの外用薬や内服薬で治らない場合はニキビ跡が目立つ前に、重症でなくても少ない量でイソトレチノインを内服するというのが世界的な治療の流れになっています。
ニキビの中でもぼこぼことした頬や顎のニキビは嚢胞性ざそうと呼ばれ、非常に治りにくいです。このタイプのニキビはイソトレチノインを使った治療が有効なケースが多いです。
イソトレチノインを難治性ニキビに使用した症例(20代男性)
治療内容 | ニキビ治療。イソトレチノイン内服とVビーム2のレーザー治療 |
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治療期間・回数 | 7ヵ月間、レーザー治療を5回 |
費用 |
イソトレチノイン20mg/日を7ヶ月分で16,500円、トータル115,500円 Vビーム全顔 33,000円を5回、トータル165,000円 |
リスク・副作用 |
イソトレチノイン:胎児奇形、皮膚や粘膜の乾燥、頭痛、うつ病など Vビーム2:赤み、むくみ、内出血、水疱、色素沈着、色素脱失など |
院長コメント | 当院で7ヶ月イソトレチノイン内服を続けたことでニキビは消えています。この患者様は赤みも同時に治療を希望されVビーム2 のレーザー治療を5回、イソトレチノインと併用したので赤みも目立たなくなっています。 |
ニキビ跡にも効果がある?
イソトレチノインで既にできたニキビ跡を治すことはできませんが、ニキビ跡の原因となる長引くニキビの症状を治療することができます。ニキビの症状が長くなるほど、炎症による肌ダメージの影響が出やすくなり、ニキビ跡が残りやすくなります。
ニキビ跡の代表的な症状は「赤み」、「黒ずみ」、「盛り上がり」、「へこみ」です。ここではニキビ跡について、イソトレチノインで期待できる効果を紹介します。
早期のニキビ治療でニキビ跡予防を目指す
イソトレチノインにはニキビ跡の症状に直接作用するような働きは期待できません。ただしイソトレチノインによりニキビを治療することで、ニキビが長引いたときにできるニキビ跡を防ぐ働きが期待できます。
難治性のニキビにもアプローチできる
ニキビは治療を受けずに放置していると、少しずつ症状が悪化してニキビ跡の原因になってしまうかもしれません。とくに膿の詰まった赤みのあるニキビ(嚢胞性ざ瘡)は難治性のニキビで深い場所の組織まで炎症が波及するため、ニキビ跡が残りやすいニキビです。イソトレチノイン以外の施術や治療で期待した効果を実感できないときには、早めにイソトレチノインの治療を開始することで、ニキビ跡の症状が悪化するのを防げるかもしれません。
ニキビ跡を作られにくくするためには、まずはニキビの症状が長引くのを防ぐことが大切です。とくに難治性のニキビがあるときには、できるだけ早めに専門的な治療を受けるようにしましょう。
酒さにも効く?
イソトレチノインは酒さのポツポツに対しても有効な治療で、メトロニダゾール、アゼライン酸、イベルメクチンといった酒さの塗り薬やビブラマイシンなどの酒さの抗生剤で治らない場合に試す価値があります。
酒さにイソトレチノインを使用する場合はニキビに使用する場合よりも通常期間は短くてよく、4-6ヶ月程度を1クールとすることが多いです。
イソトレチノインは酒さのぼつぼつ(丘疹・膿疱)に効果があります。皮脂を減らすことで、酒さの原因の一つ、デモデックス(Demodex)と呼ばれるニキビダニを減らす効果もあるとされています。ぼつぼつには非常に効果が高く、皮脂を減少させることで顔の赤みが減る場合もあります。
イソトレチノインの内服で逆に顔の赤みが増すことが内服した5%程度の患者さんで見られます。これは内服中の一過性の現象なので、内服をやめれば赤みは元に戻ります。
重症酒さに対してイソトレチノイン治療を行った症例
治療内容 | 重症酒さに対するイソトレチノイン内服とVビーム2によるレーザー治療 |
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治療期間・回数 | 2ヵ月間、イソトレチノイン20mg/日、隔日で8ヵ月間 Vビームを6回 |
費用 |
イソトレチノイン20mg/日を1ヶ月分で16,500円、トータル99,000円 Vビーム頬から下 22,000円を6回、トータル132,000円 |
リスク・副作用 |
イソトレチノイン:胎児奇形、皮膚や粘膜の乾燥、頭痛、うつ病など Vビーム2:赤み、むくみ、内出血、水疱、色素沈着、色素脱失など |
院長コメント | イソトレチノイン治療を行った酒さ患者様の経過写真。3年前からボツボツと赤ら顔がひどくなり保険診療の塗り薬や飲み薬、メトロニダゾールが効かずに当院を受診し、当院での治療から1年後には写真のように改善しました。酒さのポツポツは消えて内服終了後も再発していません。同時にVビーム2のレーザー治療を6回行うことで、酒さによる赤ら顔も目立ちにくくなっています。 |
イソトレチノインの毛穴への効果
イソトレチノインは毛穴の角化異常を抑え、皮脂分泌も減らすため、毛穴の開きや黒ずみを改善することができます。特に黒ずみについては多くの場合で目に見える改善がわかります。
内服期間には決まった目安はありませんが、20mg/日で4-6ヶ月の治療を行うことが多いです。乾燥の症状が強い場合は隔日や週2回の内服でも十分な効果が出ることもあります。
酒さによるぼつぼつ毛穴に悩む方の症例(20代女性)
鼻の黒ずみでお悩みだった20代女性の患者様。酒さによるぼつぼつも気になっていたのでイソトレチノインで治療を開始したところ、1ヶ月後には酒さのぼつぼつは消え、毛穴の黒ずみもほぼ消失しました。他にも肌質がツルッとして改善したりと鼻の黒ずみ以外にも全般的な効果が早い段階で出ました。
内服開始後1週間では逆に赤いぼつぼつが増えてしまい心配でしたが一過性で、1ヶ月続けてもらったところいい結果が出ました。
治療内容 |
イソトレチノイン20mg/日を1ヶ月 スキンケアはベーシックケアAZクリアローション |
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治療期間・回数 | 1ヶ月のイソトレチノイン内服 |
費用 | イソトレチノイン20mg/日を1ヶ月で16,500円 |
リスク・副作用 | 胎児奇形、皮膚や粘膜の乾燥、頭痛、うつ病など |
院長コメント |
イソトレチノインには注意点もありますので毛穴の黒ずみ単独であればCLRローション併用のダーマペンがおすすめです。 ・ニキビや酒さのぼつぼつができる場合 ・他の毛穴治療が過去効かなかった場合 にはイソトレチノインで毛穴治療を行うとより確実な黒ずみケアが実現できます。CLRローションとイソトレチノインは併用可能で、同時に行うとさらに強力な毛穴の黒ずみケアが可能になります。 |
イソトレチノインを毛穴に使用した症例(20代女性)
※写真は同じ人物です。症状がわかりやすいように拡大写真を複数掲載しています。
治療内容 | 長年鼻の毛穴、特に黒ずみでお悩みだった患者様です。イソトレチノインとCLRローション併用のダーマペンという2つの治療を組み合わせ1年5ヶ月後には毛穴の黒ずみがほぼ消失してツルッと肌質もきれいになりました。 |
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治療期間・回数 |
約1年5か月・3回 ダーマペン4(CLRローション併用)を期間中に合計3回施術しました。 イソトレチノイン20mg/日を6ヶ月、その後20mg隔日を4ヶ月処方しました。 |
費用 |
ダーマペン4(CLRローション併用) 22,000円×3回=66,000円(税込) イソトレチノイン内服薬 20mg 30日分 16,500円×6か月=99,000円(税込) イソトレチノイン内服薬 20mg隔日 30日分 8,250円×4か月=33,000円(税込) 合計132,000円(税込) |
リスク・副作用 |
ダーマペン:むくみ、痛み、内出血、色素沈着 イソトレチノイン:催奇形性、乾燥、頭痛、筋肉痛、骨痛 |
院長コメント |
2つの毛穴治療を組み合わせることで効果的に毛穴の黒ずみと開きを抑えることができました。さらに毛穴の開きを改善させるならジュベルック局注などの治療がありますが、ここまでよくなれば毛穴治療は一度完了になります。 ここでお示しした二人の患者様に使ったイソトレチノイン内服薬には、さまざまな注意点があるため、毛穴のお悩みに対して気軽に使う治療方法ではありません。 ただしこの患者様のようにさまざまな治療方法を試したけれど効果が実感できなかったときには、他の毛穴治療と併用することで黒ずみ除去の効果を高められます。 |
イソトレチノインを毛穴に使用した症例(40代女性)
※写真は同じ人物です。症状がわかりやすいように拡大写真を複数掲載しています。
治療内容 | 取れない鼻の黒ずみについて、長年お悩みだった患者様です。即効性のある治療を希望されたため、「ダーマペン4(CLRローション併用)」と「イソトレチノイン内服薬」を組み合わせて治療しました。治療開始から5か月後には、毛穴の黒ずみが目立ちにくくなりました。 |
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治療期間・回数 |
約5か月・4回 ダーマペン4(CLRローション併用)を月に1回、合計4回施術しました。 イソトレチノイン内服薬20mg/日を5か月処方しました。 |
費用 |
以下の施術は公的医療保険が適用されない自由診療です。 「イソトロイン(成分名:イソトレチノイン)」 20mg/日30日分16,500円×5か月分=82,500円(税込) 「ダーマペン4(CLRローション併用)」 22,000円×4回=88,000円(税込) 合計費用170,500円(税込) |
リスク・副作用 |
「イソトレチノイン」 唇や肌の乾燥、肝機能障害、関節痛、筋肉痛、骨の痛み、脱毛、頭痛、うつ病など 「ダーマペン」 むくみ、痛み、内出血、色素沈着 |
院長コメント |
黒ずみ除去の効果を高めるために、ダーマペン4とイソトレチノインという2種類の治療を組み合わせて対応した症例です。ダーマペンは細い針のついた器械を使って肌に小さな穴を開けることにより、自然治癒力を促進してさまざまな肌トラブルにアプローチする施術です。期待した効果が出るまで個人差はありますが、ダーマペン4は月に1回の頻度で5回を目安にしています。 この患者様に使ったイソトレチノイン内服薬には、さまざまな注意点があるため、毛穴のお悩みに対して気軽に使う治療方法ではありません。 ただしこの患者様のようにさまざまな治療方法を試したけれど効果が実感できなかったときには、他の毛穴治療と併用することで黒ずみ除去の効果を高められます。 また個人差はありますが、黒ずみ除去をしても、施術後に毛穴の開きの症状だけが残ってしまう方もいます。 その場合には、当院で受けられる「キュアジェット」、「トライフィルプロ」や「ジュベルックの手打ち施術」で対応すると、毛穴の開きの改善が期待できます。 ジュベルックとはポリ乳酸(PDLLA)を主成分とした薬剤です。患部にジュベルックを注入することで、コラーゲンの生成を促進して毛穴の開きといった肌悩みに効果が期待できます。期待した効果が出るまで個人差はありますが、目安となる施術間隔は1か月おきの3回です。期待した効果を維持したい場合は、さらに半年~1年に1回を目安に施術を受けるとよいでしょう。キュアジェットやトライフィルプロといった器械を使ってジュベルックを投与すると、より効果が上がる場合があります。 |
イソトレチノインで脂腺増殖症が消える?
脂腺増殖症は2-5ミリ程度の小型の黄色いできもので、ひたいやこめかみ、鼻やほほなど皮脂分泌が多い場所によくできます。30代以上で徐々に増加することが多く、予防はありません。見た目以外に悪さをすることはありませんが、見た目が気になるので除去したいという相談を多く受けます。
個数が少ない場合はラジオ波メスでの除去を推奨します。ただ数が20個超など多い場合には取りきるのが難しく、また除去してもすぐに新しい脂腺増殖症ができて外科的な除去が困難な場合があります。その際にはイソトレチノインを内服することで、脂腺増殖性を小さく、もしくは消失させることが可能です。しかし、イソトレチノイン内服をやめたときに再発する可能性があります。
脂腺増殖症でお悩みだった方の症例
写真はひたいの3ミリほどの黄色いできもの、脂腺増殖症を当院でイソトレチノイン内服を開始してから6か月後の症例。完全に消失して平坦になっているのがわかります。写真では1箇所だけを拡大して見せていますが、ほかの多発していた脂腺増殖症も消えました。
治療内容 | イソトレチノイン20mg/日を6ヶ月 |
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治療期間・回数 | 6ヶ月のイソトレチノイン内服 |
費用 |
イソトレチノイン 20mg/日 30日分を6ヶ月分 16,500円 x 6 トータル 99,000円 |
リスク・副作用 | 催奇形性、乾燥、肝機能異常、脂質異常、筋肉痛、関節痛、脱毛 |
院長コメント | この患者様では過去にオペで除去もしたのですが、脂腺増殖症が20個以上顔に多発していて定期的に増えていく状態でしたので、説明の上イソトレチノインを選択しました。ただし、高周波メスで除去した場合と違って内服が終わったら再発する可能性もあるので、ここはまだ経過をみる必要があります。 |
イソトレチノインの注意すべき副作用と対処法
イソトレチノインには、重大な副作用が報告されています。特に注意すべき副作用は、胎児の催奇形性と皮膚や粘膜の乾燥です。海外では40年以上使用されており、正しい使用方法で服用すれば重症ニキビや毛穴に非常に効果の高い薬です。
胎児の催奇形性
奇形・死産・流産・早産
妊娠の可能性がある方、妊娠している方が服用した場合、胎児の奇形や死産、流産、早産などが起きるリスクがあります。そのため、妊娠の可能性がある方や妊娠中の方は服用できません。また最後の服用から、女性の場合は一ヶ月の避妊が必要です。
皮膚や粘膜の乾燥
皮膚炎、口角炎、ドライアイ、鼻出血など
イソトレチノインは皮脂分泌を抑制する作用があるため、ほとんどの患者さまに皮膚や粘膜が乾燥する副作用が生じます。肌の乾燥が気になるときには、唇にはワセリンを、肌にはローションやクリームなどの保湿剤を塗布してください。
鼻や目なども含めて体全体が乾燥しやすくなるため、各種保湿剤はこまめに使用するようにしましょう。 当院ではニキビ・酒さ専用の保湿剤を販売しています。詳しくは「ベーシックケアAZ」のページをご覧ください。
その他の副作用
肝機能障害、脂質異常症、脱毛、関節痛、頭痛などが報告されています。
採血異常:稀だが肝機能や脂質関連の数値に異常が出ることあり、採血でモニターする
関節痛・筋肉痛・骨痛:軽度であれば内服をやめる必要はなし。症状が強ければ減量する
脱毛:稀だが抜け毛が増えることあり。内服をやめれば戻る
頭痛:頭蓋内圧亢進による。症状が軽ければ減量で対応、症状が強ければ内服中止
うつ病:以前報告はあったが、実際の因果関係は疑問視されている
炎症性腸疾患:以前報告はあったが、実際の因果関係は疑問視されている
重症のニキビやニキビ跡に効果的な治療薬ですが、重大な副作用を起こす可能性があります。イソトレチノインは厚生労働省からの通知の通り、医師の処方箋なしで個人輸入することはできません。必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けてから処方してもらいましょう。
イソトレチノインの副作用が怖いときには
イソトレチノインにはさまざまな副作用が知られているため、「使うのが怖い」と感じる方もいることでしょう。副作用は早期に発見することで、副作用症状の悪化を予防できます。ここでは副作用が怖いときに注意すべきことを紹介します。
個人輸入はしない
イソトレチノインは医師の診察により、治療が必要と判断された方のみ使用できる薬です。個人輸入は厚生労働省が推奨していない行為であり、さまざまな副作用の発見を見逃す危険性が高い行為です。イソトレチノインが怖いと感じている方は、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。
定期的な血液検査を受ける
副作用には、血液検査の異常(肝機能障害、脂質異常症)が知られています。これらの副作用が起こる頻度はまれですが、当院では副作用を早期に発見する目的で、「治療を開始するとき」と「服用開始後1か月」を目安に採血をしています。またイソトレチノインの投与量を増やしたときにも、健康状態を確認するために採血をしています。
※服用している用量が少ない場合でも採血に異常が出る可能性はあります。そのため当院では上記の場合以外にも、半年に1回を目安として採血検査を推奨しています。
もし血液検査で異常が出た場合は、再検査や投与量の減量、服用を中止するなど結果に応じて判断します。
※健康診断などの診断結果をお持ちの方で採血異常がない方は、初回の採血をしないこともあります。
併用薬に注意する
イソトレチノインには飲み合わせの悪い薬があり、併用によっては副作用が出やすくなるなどの危険性があります。以下の薬を服用中の方は、事前に医師までご相談ください。
併用を避ける薬
頭痛が出やすくなる薬:頭蓋内圧を亢進させるため頭痛の副作用が出やすくなります。
テトラサイクリン系の抗生物質(ビブラマイシン、ミノマイシンなど)
副作用が出やすくなる薬:併用によりビタミンAの過剰症が起こりやすくなります。
ビタミンAの内服薬
イソトレチノインの副作用が怖い方は、これらの注意点をよく守るようにしましょう。現在服用中の薬についてなど、気になることがあるときには医師までご相談ください。
イソトレチノインの飲み方
イソトレチノインは、1日1回を食後に内服します。朝でも夜でも飲みやすいタイミングで大丈夫です。イソトレチノインはビタミンA誘導体の一種のため、水よりも脂肪に溶けやすい性質があります。食後に服用することによって、薬剤の成分の吸収がよくなります。
一般的には20mgから服用を開始しますが、症状や体重に合わせて投与量を調整していきます。たとえば体重の多い男性の場合は、1日40mgから開始することもあります。
当院の経験では1日20mgの内服量で十分な効果がみられることが多いですが、治りが悪い場合や治りを早めたい希望がある場合には1日40mgに増量します。イソトレチノインによる乾燥の副作用が強い場合、20mg錠を1日おきや週2回で飲む方法に減量することが可能です。
イソトレチノインは重症ニキビに効果的な薬として知られていますが、副作用は用量依存的です。必要以上に服用した場合、副作用が出るリスクが高くなる可能性があります。イソトレチノインの内服は、必ず医師の指示に従い、用法用量を守って服用しましょう。
イソトレチノインの治療期間について
平均的には6ヶ月ほど内服して治療終了とすることが多いです。治療期間は最低4ヶ月、長いと1年程度を1クールとし、ほとんどの患者さまは1クールで治療の効果が期待できます。また2クールも希望される場合は、2ヵ月ほどの休薬期間を空けて治療期間を延長するケースもあります。内服する期間には個人差がありますが、4~12ヵ月程度で治療を終了します。
最低4ヵ月間は治療を続け、ニキビができない状態になってから2ヶ月内服を継続し、治療終了とすることで内服後の再発を防ぐことができます。治療に反応が悪い場合、重症でなかなかポツポツが消えない場合も、1年程度の内服を続ければ改善することがほとんどです。
次の写真は5年以上保険適応の塗り薬や飲み薬で治らないとお悩みだった10代女性の当院の患者さまです。
治療内容 | ニキビ治療。イソトレチノイン内服とVビーム2によるレーザー治療 |
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治療期間・回数 | 8ヵ月間、イソトレチノイン20mg/日、隔日で2ヵ月間(計10ヵ月間) |
費用 |
「イソトロイン(成分名:イソトレチノイン)」 ・20mg/日30日分16,500円×8か月分=132,000円(税込) ・20mg/隔日30日分8,250円×2か月分=16,500円(税込) 「Vビーム2」 ・全顔 33,000円(税込)×3回=99,000円(税込) 合計費用:247,500円(税込) |
リスク・副作用 |
イソトレチノイン:胎児奇形、皮膚や粘膜の乾燥、頭痛、うつ病など Vビーム2:赤み、むくみ、内出血、水疱、色素沈着、色素脱失など |
院長コメント | イソトレチノインを使ってニキビ自体は完治しました。内服と同時にニキビあとの赤みにVビーム2によるレーザー治療を3回行うことで薄いニキビ跡の赤みがわずかに残る程度にまで改善しました。赤いポツポツだけでなく細かい黒ニキビもイソトレチノインの効果で消えています。 |
当院の治療の特徴
当院では副作用を防ぐため、イソトレチノイン(アキュテイン)の服用開始時と、治療から1ヵ月後に血液検査を行っています。またイソトレチノインの内服量を増量した場合も、適宜採血を行いますが、血液検査で数値に異常が見つかった場合は、処方を中止する場合があります。
ほとんどの患者さまはイソトレチノイン内服から6ヵ月で効果が期待できますが、治療期間には個人差があり、延長することもあります。患者さまの症状の程度や状態、ご希望に応じて、Vビーム2の併用なども行い、より効果的に治療を進めていきます。
イソトレチノイン内服後の再発のリスクと経過について
イソトレチノインには皮脂分泌の抑制や毛穴つまりの解消などの作用から、服用後は長期的に効果が持続することが多いです。しかし中には再度ポツポツとニキビが出てくることがあります。
軽度なことが多いため、ほとんどの場合はベピオゲル、ディフェリンゲル、アゼライン酸など、ニキビの塗り薬で対応します。それでもニキビが出続ける場合には2クール目のイソトレチノイン内服を開始することがあります。
イソトレチノイン治療後の再発率と再発に影響する因子の調査によると、再発を防ぐためには完全に臨床的改善がみられるまで治療を続け、治癒してから投与量に関係なく2ヵ月以上治療を延長することが重要です4)。
またイソトレチノインは、体重1kgあたりの積算量が120mgを超えると再発しにくくなるといわれています。体重50kgの人が1日20mgを服用する場合、
体重1kgあたりの1日量=20(mg)÷50(kg)=0.4(mg/kg)
体重1kgあたりの量が120mgを超える日数=120(mg)÷0.4=300(日)
理論上は体重50kgの人の場合、1日20mgの服用を約10ヵ月続けると、イソトレチノインの服用を中止しても再発しにくくなります。
イソトレチノインを服用できない方
妊娠の可能性がある方、妊娠中の方、授乳中の方
12歳未満の小児
また、以下の点に注意しましょう。
献血は男女ともに服用中、最後の服用から半年間はお控えください。
紫外線の影響を受けやすいため、紫外線対策を十分に行ってください。
以下に該当する方はご相談ください。
- ステロイド薬を内服している方
- うつ病などの精神疾患を抱えている方
- テトラサイクリン系の抗生剤などを服用中の方
- イソトレチノイン製剤、トレチノイン製剤でアレルギーの既往歴がある方
- 肝機能障害のある方
- ビタミンA過剰症の方
その他のよくある質問
- イソトレチノインは他の肌治療と組み合わせることはできますか?
- 可能です。10年ほど前にデータが改訂され、脱毛、Vビーム、シミ取りなど各種レーザー、ダーマペン、ピーリング、ほくろ除去などの小手術はいずれもイソトレチノイン(アキュテイン)内服中でも問題なくできます。Vビームでの赤み、ダーマペン・サブシジョン・TCAクロスでの凹み、などニキビ跡治療もイソトレチノイン内服と同時に可能です。 開腹や美容外科での大きな手術は、イソトレチノイン内服中は避けたほうがよいとされています。
- イソトレチノインは何歳から服用できますか?
-
欧米でのニキビ治療ガイドイラインで12歳から内服可能とされています。当院でも12歳の患者様で、保険診療の範囲で治らないニキビに対してイソトレチノイン(アキュテイン)で治療した経験があります。
思春期のニキビでイソトレチノインを使う際の理論的な注意点は骨への影響になります。身長の伸びに影響が及ぶ可能性が理論的にはありますが、過去の論文データでは半年程度の短い期間のイソトレチノイン内服では骨への大きな影響は出ないとされています。
- イソトレチノインは組み合わせの悪い薬はありますか?
-
ビブラマイシン、ミノマイシンといったテトラサイクリン系の抗生剤とは同時に内服しないようにしましょう。頭蓋内圧亢進による頭痛の副作用が出やすくなるためです。ほかの抗菌薬、鎮痛薬、アレルギー薬、経口避妊薬(ピル)との併用は問題ありません。
ビタミンAを主としたサプリメントの摂取はお控えください。 - イソトレチノインは一時的にニキビがひどくなることはありますか?
- 一時的に悪化することがあります。約1~2週間後に症状が悪化し、1ヵ月程度で症状が改善していくことが多いです。
- イソトレチノインはニキビ跡にも効果はありますか?
- イソトレチノインは今あるニキビ跡に直接作用することはありませんが、服用によってニキビができにくい肌質になり、新しくニキビ跡を防ぐことにつながります。
- イソトレチノインは男性も服用できますか?
- 男性も服用できます
- イソトレチノインの服用は途中でやめてもいいですか?
- 効果が出てきても途中で服用を中止することで、ニキビの再発リスクが高まります。自己判断での中止は避け、医師の指示に従って服用するようにしましょう。
料金
イソトレチノイン(アクネトレント、20mg/日)30日分 | 16,500円 |
重症ニキビや酒さにお悩みの方は、池袋駅前のだ皮膚科へ
イソトレチノインは皮脂分泌抑制作用、角化抑制、抗炎症作用があり、重症ニキビや酒さに効果的な治療です。重大な副作用として、胎児の催奇形性や乾燥があるため、個人輸入ではなく、医師の指示に従って服用するようにしましょう。気になる症状がある方は、当院へお気軽にご相談ください。
【参考】
(1)James Q. Del Rosso.Face to Face with Oral Isotretinoin.J Clin Aesthet Dermatol. 2012 Nov; 5(11): 17–24.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3509883
(2)Ahmad Assiri.Efficacy of Low-Dose Isotretinoin in the Treatment of Rosacea: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus.2024 Mar 27;16(3)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11052926/
(4)Afsaneh Sadeghzadeh-Bazargan, et al..Systematic review of low-dose isotretinoin for treatment of acne vulgaris: Focus on indication, dosage, regimen, efficacy, safety, satisfaction, and follow up, based on clinical studies.Dermatol Ther.2021 Jan;34(1)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33085149/
(5)Elif Demirci Saadet .Investigation of relapse rate and factors affecting relapse after oral isotretinoin treatment in patients with acne vulgaris.Dermatol Ther.2021 Nov;34(6)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34431590/
未承認医薬品等の表示
イソトレチノインについて
未承認医薬品等(異なる目的での使用)
イソトレチノインは、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
入手経路等
インドのCipla社から個人輸入しています。
個人輸入された医薬品等の使用リスクに関する情報はこちらのページ(https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/index.html)
イソトレチノインの個人輸入についての厚生労働省の注意喚起はこちらのページ(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1b.html)をご確認ください。
国内の承認医薬品の有無
国内で同程度の効能・効果で承認されている国内承認医薬品薬剤はありません。
諸外国における安全性などに係る情報
米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。胎児の催奇形性、鬱、精神病などの精神疾患の副作用も報告されています。
※テスト環境のためコラム非表示
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